―とまどいながらでもいいから愛して欲しい―
あなたは困った顔をする筈だから何も聞かないし、ついてもいかない。
平静装って、いつも笑顔で手を振ればわきまえた人間にも見えるでしょう?
日に何度も外を見てがっかりして、それでも、毎日じゃ辛くって、
いい子でい続ける事なんて出来る訳ないのに−−−−
at heart
足早に廊下を歩いて部屋に着くなり、相手の返事も聞かずにドアに手をかければ、想像した通りの反応。
「どうしたんだ・・?急に―」
こんな時まで冷静でいないでよ。寂しいと思っているのは私だけ?
思いっきりバッシュの体に抱きつけば、勢いを受け止めきれず後ろの椅子に倒れこむ彼。
「―」
喋らないでと口を手で押さえて首元に顔をうずめれば、
拒絶も出来ずに彼の手は宙に浮いたまま。
姿を見れば心が浮かれ声を聞けば体が震える、それは私だけの錯覚−?
「悔しい・・・」
そう言って両手を背中に回し力一杯抱きしめる。
「どうしたんだ?」
そんな抵抗も虚しく頭を撫でる手は優しくて。
「会いたかったの、それだけ」
「そうか」
「それってバッシュはどう思うの?」
「どう思うとは?」
質問しているのにそのまま返すなんて。
「好きか、嫌いか。を聞いたの」
「・・・嫌いでは、ない」
恥ずかしさを漂わせて中途半端に濁した答えを私に返すバッシュ。
「本当にそう思っているの?同情されてるみたい私って」
「―ッそれは違う」
「なら私の顔色なんて窺わないで。思ったことを言ってよ」
バッシュは優しすぎる。それが良くもあり辛くもあるの。
彼の首もとに手を這わせるようにして真正面に自分の顔を向け見つめあう―
「自分を曝け出す事が恐い?」
「そうかもしれない。。。君を傷つけてしまいそうで」
「試してみてよ。本当にそうなのかどうか」
もしそうなったなら後で治してくれればいいだけの事、きっと今よりも強くなれるから。
「私ね、どうしようもない位バッシュに惚れてる。
あなたの顔が見たくて話がしたくて傍に居たくてキスがしたい、こんな私を嫌う?」
そんな事があるわけが無いと、バッシュは首を横に振り小さくため息をついた。
まして自分の方がどれ程その欲望が強いか・・・。
「俺は、自分を保つので精一杯なんだ」
「?―バッシュ」
「言い訳に聞こえてしまうかもしれない、それでも」
大きな彼の手が頬に触れるだけで吐息が漏れ、追討ちを掛ける様に近づく唇。
「を想わない日はないんだ」
囁く様なその言葉は私の心を的確に捉え淋しかった心を一瞬で埋めてしまった。
「バッシュは、、、あまり顔に出さないから−」
「内心は不安で一杯だ」
自分を装うだけで精一杯だからこそ顔には出せない。
きっとそこから崩れていくのは容易いから。
そして、その引き金を引くのはいつも―――君
どうかこれ以上何も喋らないでほしい、そう思い重なりあわせた唇。
いつものように触れるだけのキスは彼の意思を私に伝えてしまう。
ねぇ、不安は誰の心にも芽生えるもの。私にもその思いはあるから――
だけど、
好きな人だからこそ望む事だから、心の奥に湧き上がるその衝動を止めたりしないで―
――私は、貴方に必要とされたい―
本能と口付けで私を翻弄して貴方の心を曝け出して、そして最後にその両腕で抱きしめて欲しいの。
互いの心にある不安は姿を消してこの心は満たされるはずだから。